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界面活性剤を中心とした歯磨剤の安全性について

                           2000年7月24日
ライオン歯科材(株) 学術室

歯磨剤の安全性について、主に界面活性剤の配合を中心にご説明を致します。

1)歯磨剤への界面活性剤の配合

ペーストタイプの歯磨剤が使われるようになって以来今日まで、半世紀以上にわたって
殆どの商品に界面活性剤が配合され、世界中の人々がこれを使用してきました。
界面活性剤を配合する理由は、口中の汚れの除去(配合の有無による除去効果の
ちがいについては、神奈川歯科大学の研究報告などがあります)、口の中に成分を
速やかに広げる(分散性)などです。

歯磨剤に配合される界面活性剤で代表的なラウリル硫酸ナトリウム(アルキルサルフェイト。
略称AS)は、ヤシ油または石油を原料とした二種があります。現在国産の歯磨剤に配合
れている界面活性剤はほとんど全部が植物性で、残りの一部には動物性(石けん歯みがき
など)が使われているようです。

2)界面活性剤を配合した歯磨剤の安全性データ

歯磨剤に配合されている界面活性剤は、急性毒性、慢性毒性などで安全性が
確認されたものを使用しています。

口すすぎをしない場合に近い「長期の慢性毒性」については、ASを2%、
その他の原料は標準的なものを使った歯磨剤をマウスに摂取させた実験で、
体重20kgの小児が歯磨剤を1日60〜160g食べ続けても影響は無いことに
なるとの結果を得ています。

ASの配合量は一般的に1%未満が多いようですが、Check-Upは市販歯磨剤より低く、
Check-Up foamは更に低くなっています。口腔粘膜への安全性については確認されて
いますが、Check-Upの発売以来3年間に私どもが問い合わせを受けた中で、同製品に
起因した粘膜への影響かもしれない、という事例は数件です。

3)口すすぎとフッ化物

日本では現在のところ医科向医薬品も含めて、フッ化物は局所的投与のみであり、
呑み込む用法である全身的投与は認められていません。歯磨剤は、ブラッシングと
ともに使用し、口すすぎをすることを前提に組成が作られています。

メーカーとしては「1〜3回位、口すすぎをしてください」とご説明をすることになりますが、
歯科医の先生方が個々のご判断により、口中にフッ化物の有効量を長く滞留させるために
用法を越えた使い方を指導されることは、差し支えないようです。

なおレノビーゴは唯一のスプレータイプですが、「歯ブラシに噴霧して歯を磨く」が用法で、
フッ素濃度が低く(100ppm)、1回の噴霧量が少ない(0.02ml)ゆえに、認められたのでは
ないかと推量します(現在は、同種のタイプは商品化は承認されないようです)。

神奈川歯科大学・口腔衛生学教室からは、レノビーゴを直接歯に6回噴霧し口すすぎ無し
で就寝した場合、翌朝の口中のフッ素濃度は0.033ppm、Check-Up0.5gを使用後2回口すす
ぎをした時の翌朝のフッ素濃度は0.085ppm、との研究結果が出ています。

4)歯磨剤の安全性

以上を踏まえて、歯科用歯磨剤は安全性で懸念がある状況には無いと見ております。
一般的に歯磨剤の組成は、例えば抗ガン剤のようにギリギリのリスクをとったものではなく、
充分に安全性の幅に配慮したものとなっています。

これまでペーストタイプの歯磨剤が普通に使われてきたヨーロッパで、添加成分の再評価・
点検の動きがあるようで、その理由は推定の域を出ませんが、
1.
日々多くの化学品に接している中で、アレルギー体質または敏感な人が増えている
2.
高齢者の人口が増える中で、粘膜が弱っているお年寄りが増えている
などが背景にあるのかもしれません。

アレルギーについては、歯磨剤がアレルギーを引き起こすのではなく、他のアレルギーに
よって起きた口腔粘膜の症状に、歯磨剤が影響する可能性が考えられます。

フッ化物配合歯磨剤は、WHOのTechnical Reportやマルメ大学Bratthall教授の調査報告でも、
先進工業国のカリエスフリーに極めて(または最も)高い貢献をしていると位置づけられています。
しかし生活環境の変化などによって、アレルギー体質など敏感な方が長期的には増える傾向にあり、
問診等でその懸念がある患者さんには、その程度によって口すすぎを増やす指導などをされては
いかがでしょうか。

環境の大きな変化とともに宿主側もその影響を徐々に受けて、これまで問題が無かったものを
見直す必要がある場合もあろうかと思われます。メーカーとして製品の発売後も人体への新たな
影響などは常時留意し、必要であれば対応する姿勢でおります。

今後も先生方からのご指摘や臨床からの情報など、提供をいただければ幸いでございます。

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