PPAを含む薬品の副作用に関する重要な情報 by T. Saito 11/18/00

 すでに朝日新聞等の報道でご存じかと思いますが、米国でFDAがPPAを含む薬の販売禁止をメーカーに通達しました。
 この件に関する話題が私が参加しているEBMに関するMLでありました。その中から、この問題を考え際のキーとなる発言を皆様にもお伝えしたいと思います。
 なお、先方のMLの方には、こちらに情報提供する許可は頂きました。貴重な情報を提供して頂いた多くの先生方に深く感謝いたします。ありがとうございました。
 以下の文章は多くの方の発言を私が個人的にまとめ
たものですので、文責は私にあります。


  • 厚生省の見解

 PPAに関してですが、問い合わせが結構ありまして、毎日新聞の朝刊にも投書がありましたので厚生省の安全対策課に問い合わせてみました。

 以下 安全対策課 **様のお話。

 PPAの適正使用に関する文書を平成8年に出しており、それが引き続き継続中であるので新たな通知等の対応は考えていない。
 米国ではヤセ薬としても使用されており、日本国内での使用状況とは異なるので、NEJMの論文をもって日本でもPPAによる脳出血が多発するとは考えられない。
 国内では平成7年にPPA内服中に脳出血が発生した例が報告されており厚生省も把握しているが、この1例を持ってPPAが脳出血を起こす可能性が高いとの判断は出来ない。
 それから、一部の国内市販薬のPPA含有量(1日量)がFDAの勧告(75mg)を上回る100mg含有されている問題に関しても承知しているが対応する必要は無い。

 ちなみに容量依存性の検討では、対照群のPPA摂取量の中央値である75 mgより多い場合の補正済みオッズ比は2.30(1.96-5.54,p=1.16)、少ない場合は1.01(0.36-2.80,p=0.98)であったそうです.


  • 日本国内の現状

 PPAの1日量が気になりましたので、成人用鼻炎薬についても、大衆薬事典で調べました。掲載されている成人用鼻炎薬56製剤のうち47製剤(84%、大衆風邪薬では2.8%(6/216))に PPAが含まれており、ダンリッチと同じく1日量が100mgの製剤も結構ありました(最後にリストを載せました)。こんなに種類が多いということは、 PPAの消費量って、とんでもないかもしれないですね。ほんのちょとだけ脳出血が増えるといっても、国のレベルでは結構な数字かも。

 国内の生産はPPAの生産は、アルプス薬品工業株式会社が一手に引き受けているようです。

 生産量は400tぐらい、そのうち国内流通が100t程度であったと思います。これを処方量に直すと、一人一日100mgとして、10億人日分ということになります。PPAを服用する女性10万7千人〜326万8千人から3日に1人の割合で出血性脳卒中が発生するとすれば半数が女性と仮定すると5億日処方仮説は321000〜10893333日人よって3115人〜91人となります。
 
5億人日が仮に0.5億人日(このぐらいは皆さん飲んでいるでしょう)だとしても出血性脳卒中が312〜9人/年となります。風邪薬としては社会的に許容されない人数ではないでしょうか?

 だいたい1〜3ヶ月にひとりくらいのペースで、脳出血患者を救急でみますので、これからは、「鼻炎や風邪薬を最近のみましたか?」という質問を加えることにします。飲んでるようでしたら、薬の箱を持ってきていただくことにします(患者さんにじゃないですよ)。患者さんだけではなく、厚生省も製薬会社も薬局もリスクを抱え込んでしまったかもしれないですね。花粉症患者は増えてると聞くし、やせたい女性も多いですし(PPA含有やせ薬は日本でも販売されてます)。


  • PPA含有薬リスト

 PPA含有大衆鼻炎薬リストを付けましたが、これら以外にも国内では流通しているようですので、あくまでも参考までにご覧ください。手入力ですので、ミスあるかも。(1日量を併記してあります。)

<風邪薬>                     *1日量を併記
ストナジェルカプセル 藤製薬 75mg/6C
ベンザブロック 武田薬品工業 75mg/6T
ベンザブロックSP

武田薬品工業

75mg/6T
ベンザブロックSPカプセル 武田薬品工業 75mg/6C
ベンザブロックSP錠 武田薬品工業 75mg/9T
ベンザブロック錠 武田薬品工業 75mg/9T

<病院薬>
ダンリッチ 住友 100mg/2C

<大衆鼻炎内服薬>
コルベロン鼻炎用カプセル「持続性」 富山化学工業 90mg/2C
サンテン鼻炎顆粒 参天製薬 90mg/2包
スカイナー鼻炎用S エーザイ 80mg/2C
パブロン鼻炎カプセル 大正製薬 80mg/2C
浅田飴鼻炎シロップ 浅田飴 100mg/60ml
浅田飴鼻炎ソフトカプセル 浅田飴 75mg/3C
アナクール持続性鼻炎カプセル 日水製薬 90mg/2C
アネトン鼻炎カプセル ファイザー製薬 75mg/3C
アラクス鼻炎スティック アラク 100mg/3包
アルガード鼻炎クールチュアブル ロート製薬 90mg/3T
アルガード鼻炎ソフトカプセル ロート製薬 75mg/3C
エザック鼻炎L 日本たばこ産業 90mg/2C
エザック鼻炎内服液ウイズポケット 日本たばこ産業 100mg/6包
エスタック大人用鼻炎内服液 エスエス製薬 90mg/60ml
エスタック「ニスキャップ」 エスエス製薬 100mg/2C
コルゲンコーワ鼻炎ソフトカプセルS 興和 90mg/3C
コンタック600SR スミスタライン・ビーチャム製薬 90mg/2C
コンタック鼻炎 スミスタライン・ビーチャム製薬 90mg/3C
サンテ鼻炎ソフトカプセル 参天製薬 75mg/3C
JPS鼻炎カプセル ジェーピーエス製薬 75mg/3C
持続性プレコール鼻炎薬 藤沢薬品工業 90mg/2C
新コルゲンコーワ鼻炎ソフトカプセル 興和 75mg/3C
ノバボン鼻炎カプセル 田辺製薬 100mg/2C
スズレックス鼻炎カプセルL12 ホーユー 90mg/2C
ストナ鼻炎カプセル 佐藤製薬 75mg/2C
ストナリニ 佐藤製薬 68mg/2T
ストナリニサット 佐藤製薬 72mg/6T
セピー鼻炎ソフト ゼリア新薬工業 75mg/3C
ダン12 住友製薬ヘルスケア 75mg/2C
チミコデ鼻炎カプセル 三菱東京製薬 75mg/3C
パイロンL24 塩野義製薬 70mg/1C
フジビトール鼻炎薬 湧永製薬 90mg/2C
プラタギン鼻炎カプセル 三宝製薬 100mg/6C
プラタギン鼻炎内服液A 三宝製薬 100mg/60ml
ペラック鼻炎カプセル 第一製薬 75mg/3C
ベルエムピ鼻炎カプセル カネボウ薬品 90mg/2C
ベルエムピ鼻炎内服液 カネボウ薬品 50mg/30ml
ヘルビック鼻炎用カプセル 明治製菓 90mg/3C
ベンザAL 武田薬品工業 100mg/4T
ベンザ鼻炎用カプセル 武田薬品工業 80mg/2C
マピロン鼻炎カプセル 大日本製薬 90mg/2C
メナム 救心製薬 90mg/3包
龍角散鼻炎持続性カプセル 龍角散 80mg/2C
龍角散鼻炎ソフトカプセル 龍角散 75mg/3C
ルックエス鼻炎カプセル 常盤薬品工業 90mg/6C
ルル内服液「鼻炎用」 三共 100mg/60ml
ルル鼻炎ソフトカプセル 三共 90mg/9C

<小児用>
宇津こども鼻炎シロップ 宇津救命丸 45mg/45m
こどもストナリニ 佐藤製薬 48mg/12T
こどもパブロン鼻炎液 大正製薬 66mg/60ml
コルゲンコーワ鼻炎ソフトカプセル小児用 興和 50mg/6C
小児用エスタック鼻炎シロップ エスエス製薬 60mg/48ml
ストナリニ小児用 佐藤製薬 36mg/3包
ストナリニ「小児用」シロップ 佐藤製薬 30mg/30ml
パブロン鼻炎カプセルL小児用 大正製薬

40mg/2C


  • 重要な補足情報

 PPAを含有しているのに、塩酸フェニルプロパノールアミンと記載されていないものが出回っているという情報が入りました。特に海外ではdl-塩酸ノルエフェドリンと、言う名称が多く使われているらしいです。また、dl-塩酸メチルエフェドリンですが、これも類似化合物です。


  •  FDA勧告の根拠となる論文

phenylpropanolamineですが、論文はNEJMより昨日early releaseされていますね.キモとなる表4を訳しておきます.

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phenylpropanolamineを含む製品の使用と出血性脳卒中の関連*
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女性
人数(%)
変数 患者 対照 補正オッズ比(95% C.I..) p値
解析数  383 750
PPA不使用 355(92.7) 713(95.1)
PPA使用** 21(5.5) 20(2.7) 1.98(1.00-3.90) 0.05
風邪薬 16(4.2) 19(2.5) 1.54(0.76-3.14) 0.23
やせ薬 6(1.6) 1(0.1) 16.58(1.51-182.2) 0.02
PPA初回使用 7(1.8) 4(0.5) 3.13(0.86-11.46) 0.08

男性
人数(%)
変数 患者 対照 補正オッズ比(95% C.I.)) p値
解析数  319 626
PPA不使用 309(96.9) 597(95.4)
PPA使用** 6(1.9) 13(2.1) 0.62(0.20-1.92) 0.41
風邪薬 6(1.9) 13(2.1) 0.62(0.20-1.92) 0.41
やせ薬 0 0
PPA初回使用 1(0.3) 1(0.2) 2.95(0.15-59.59) 0.48

合計
人数(%)
変数 患者 対照 補正オッズ比(95% C.I..) p値
解析数  702 1376
PPA不使用 664(94.6) 1310(95.2)
PPA使用** 27(3.8) 33(2.4) 1.49(0.84-2.64) 0.17
風邪薬 22(3.1) 32(2.3) 1.23(0.68-2.24) 0.49
やせ薬 6(0.9) 1(0.1) 15.92(1.38-184.1) 0.03
PPA初回使用 8(1.1) 5(0.4) 3.13(0.96-10.28) 0.06

*PPAの不使用は、起始日より前2週間の間にこれらの製品の使用がなかったものと定義した:患者群の11名、対照群の33名が2週前から3日前の間にそのような製品を摂取していたが、これらは解析に含めた.(何らかの)PPA使用は、起始日当日の発作前、ないし起始日より3日前までの間に使用したものと定義した.PPA初回使用は、何らかのPPA含有製品を発作前24時間以内に摂取し、かつ起始日より前2週間以内にその他のPPAの使用がなかったものとした.PPA初回使用時に発作を起こした例は、全例風邪薬の例であった.C.I.は信頼区間を表す.

+ オッズ比は喫煙状況、高血圧の有無、人種(黒人vs非黒人)、教育レベルで補正した.
** 女性患者の一人は、暴露調査期間中にPPAを含む風邪薬とやせ薬の両方を摂取していた.

実際の報告書をみると21例の暴露群の服用量の中央値が75mgとなっています。ダン・リッチの塩酸フェニルプロパノールアミン含有量は50 mgです。容量依存性の検討では、対照群のPPA摂取量の中央値である75mgより多い場合の補正済みオッズ比は2.30(1.96-5.54,p=1.16)、少ない場合は1.01(0.36-2.80,p=0.98)であったそうです.