●疫学嫌いも自然頻度なら簡単!    by T.Saito  10/11/2003

数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活
ー病院や裁判で統計にだまされないためにー
ゲルト・ギーゲレンツァー著(吉田利子訳). 早川書房

今、話題の新刊です。一般書店で平積みされてる本です。表紙の帯には、


【問題】
40才の女性が、乳がんにかかる確率は、1%。
乳ガンである人が、乳房S線検査で陽性と出る確率は90%。
本当は乳がんでなくても、検査で陽性と出る確率は9%。
あなたが40歳の女性で、検査結果が陽性だったとしたら、
あなたが乳がんである確率はどれくらいですか?
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答えに悩んだら本書を読まないと危ない!
(あなたが医師ならもっと危ない)


と刺激的な文章が書いてありました。この問題が解けなくてもご安心ください。普通の医師でも解けません。難しい問題でなく、単に学生時代に考え方を教えてもらってないだけです。卒後、臨床疫学を学んだ方ならベイズの式で事前確率から有病率を考慮すると事後確率が計算すればいいのだと気づきます。しかし、卒後研修やEBMに興味のあるでないとそういう知識を得る機会がまだまだ少ないのが医療界の現実ですね。
 ところが、この問題、著者ゲルト氏は、「自然頻度」で考えると、難しい数式を使わずとも小学生でも答えを導き出せると教えてくれます。ちなみに、私の子供たち(小6と中2)も楽しそうに問題を解いていました。是非、ご家庭でも試してみてください。
 さて、「自然頻度」で解いてみましょう。
同じ情報を「自然頻度」で示すと


【問題】
100人の女性を考えよう。このうち1人は、乳がんで、たぶん検査結果
は陽性である。乳がんではない残りの99人のうち、9人はやはり検査
結果が陽性になる。したがって、全部で10人が陽性である。陽性に
なった女性のたちのうち、ほんとうに乳がんなのは何人だろう?


このように情報を頻度で提示すると、検査が陽性と出た女性のうち、ほんとうに
乳がんにかかっているのは10人中1名ということが簡単にわかる。したがって、
問題1の答えは、10%であることがすぐわかります。(細かい数値はさておき)

ツリーで図に示すともっと直感的でわかりやすいですよ。40才の女性が100人いるとしたら、それがどのように枝分かれしていくか考えてみます。

40才 女性
100人
乳ガンの人
 1人
乳ガンでない人
 99人
陽性
1人
陰性
0人
陽性
9人
陰性
90人
 このように考えると、同じ精度をもつ検査でも、その人が所属する集団の有病率を知って行わないと、疑わしい(偽陽性)の人だらけで無駄な検査になります。男性が乳がんの検査をやるとしましょう。アホなことをいっていると思うでしょうが、優秀な医師も同じようなことをしているですよ。男性に乳がんの検診をやろうと思う人はいないでしょうが、それは、その集団の有病率を直感でわかるからです。しかし、40才の女性の乳がんの有病率をしっているのにすぐに乳がんのX線検査を勧めるのはどう思われますか?
 わが身と家族や友人を守るために、「先生にお任せします。」だけでなく、少しだけこの本を読んでみてはいかがでしょう。無駄な検査結果で無用な不安になることもなくなるでしょう。(え、「そんな事バラしたら、儲からなくなっちゃうから止めてくれ!」 って、 いったいあなたは、誰?)
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