●今日の1冊 「健康帝国ナチス」    by T.Saito  03/31/2004


健康帝国ナチス」ロバート・N・プロテクター 草思社 2200円

ナチズムが大衆の人気を集めたのは、ユダヤ人憎悪があったからだけではない。大衆はナチズムに、健康志向をはじめとする様々な分野に、若さの回復を見たのだ。国家や個人にとって「健康」とは何か? 異色のナチズム研究書。

ナチスは「民族」の健康を守ることにきわめて強い関心を持っていた。癌は増大する脅威とみなされ、おそらくアドルフ・ヒトラーの頭の中でも特別な意味を持っていた(彼の母親クララは1907年に乳癌で死亡している)。ナチスの医師たちは多くの領域で癌と戦った。環境や職場における危険を排除し(アスベストの使用を制限)、食品の安全基準を定め(発癌性のある殺虫剤や着色料の禁止)、早期発見を推奨(「男性はマイカーのエンジン点検と同程度の頻度で腸の検査を受ける方がいい…」)した。世界で最も洗練されたタバコに関する疫学をもとに、ナチスの医師達はとくにタバコの害を熱心に訴えた。彼らはだれよりも早く喫煙を肺癌と結びつけた。ヒトラー自身も熱心な禁煙推進派で、自分の政治的成功を禁煙のおかげだとしていた。(Amazonより)


 当時からアスベストの発癌性を知っていたナチスの医学レベルには驚愕ですね。唐沢版 「白い巨塔」のアウシュビッツロケがナチスの禁煙と肺癌予防を知っての上で原作と意図的にロケ地を変えたのならすごい脚本家ですね。

 ナチスの健康志向は、「根拠のない恐怖感」から危険因子はすべて排除しようと考えるナチスの世界観から出来たようです。現代の米国主導のテロ対策がナチス帝国の排他主義とダブって映る。

 極端な健康志向の現代アメリカ社会が、ナチスの目指していた健康ユートピアと同じとは、なんとも皮肉なものである。歴史がアメリカの将来を語るのであろうか。

 科学的な根拠のもと、PMTCによる徹底的な清掃、薬剤クロルヘキシジジンによるミュータンス菌の排除など、その思想の裏には、ナチス同様の思想が無いだろうか。

 エビデンスを伝えるものは、良識、人間性を常に問われていることを痛感した。

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